このところ中国の銀行にある預金高が増えていくことが気になっていた。
2020年に中国に戻れなくなった時も、わたしは中国にあるお金を引き出さないで日本にある預金で生活をしていたので、大学から中国の銀行に振り込まれた給料がどんどん貯まった。それに、いまでも工商銀行のカードでは日本のATMでお金を引き出せないが、今使っている建設銀行の磁気テープ付きカードも期限が来たら日本でお金を引き出せないカードと交換しなければならない。そうなると日本にいて中国の銀行の預金を引き出すことはできなくなる。
また、コロナの時のように今後も何かあって中国に戻れなくなることもあるかもしれないので、とりあえず今中国にある預金を日本の口座に移したいとずっと考えていた。
そのためにまず最初に昨年の帰国時に海外在住者が送金に使える口座を用意した。普通の日本の銀行口座は海外居住者は原則的に解約しなければならないことになっている。海外居住者でも持てて送金に使える口座を調べて、きちんと海外転出手続きをする必要がある。
その後、中国に戻ってからも、コロナで外出がままならなくなったり、居留証の切り替えなどがあったりして、気にしながらもずっと日本への送金をしないできてしまった。
そこでいつまでも先送りにしていてもしかたがないので、とりあえず「三月中に送金しよう」と心に決めた。しかし、春学期が始まって収入証明を出してもらおうとしたら、大学の担当職員が休暇をとるので、しばらくは緊急の用事以外は受け付けないとの連絡。月末までまって連絡してみると、「来学期まで休暇をとる」とのこと。結局は学生のアルバイトの子が証明書を出してくれた。
レートはそれほどよくないが、とりあえず送金を片付けてしまおうと思って、次の必要書類をそろえた。
1.新旧パスポート(居留証が貼られているもの。税務書類に書かれているパスポート番号は古いパスポートのものなので古いほうも準備。)
2.納税証明書(四年分を税務局のアプリでダウンロードして印刷。送金額に合わせて納税証明書が必要。四年分くらいあれば大丈夫だろうと思って四年分を用意)
3.収入証明書(学校が発行したもの。「○○万元×4年」というおおざっぱなもの)
4.雇用契約書
5.銀行カード
そのほか、送金のための必要事項を英文で用意し、スマホ画面ですぐに見られるようにしておいた。
1.日本側銀行の名称と住所とSWIFTコード
口座番号
2.日本の自宅の住所
3.中国の住所
中国からの海外送金経験者のブログなどを見ると、財務部の人に同行してもらったというようなことが書いてあり、難しそうで気持ちがくじけそうになったが、同僚の先生に聞いてみると、銀行の担当者が慣れていれば40分くらいで簡単にできるというので、一人で行ってみることにした。
まず海外送金業務をしている工商銀行の支店を調べ、午前中の授業が終わった後に行ってみた。入口にいる行員に「海外送金をしたい」というと「二階のカウンターです。午後は二時から始まります」と言われたので、KFCでそれまで休憩。
いよいよ二時になったので、二階のカウンターに行ってみると、若い女性の行員がいて「一回の送金の上限は一万元までです。それ以上の送金には○○の書類が必要です」と言う。
そんなことは聞いていないぞ。一回に一万元しか送金できないなら、何十回も通わなければならない。見ると彼女の前には「見習期」という札がおいてある。もしかしたら業務をよく知らないのでは?と思い、「そんなはずはないです。今日、持ってきた書類があれば全額送金できるはず」と言うと、彼女は誰かに聞きに行き、結局、「やはり全額送金できます」とのこと。それには先に一階に降りて「GOUHUI」してくるようにと言われた。「GOUHUIって何?」と思って尋ねたが、「一階でそういえばわかります」というので、一階のカウンターに行って「海外送金のためにGOUHUIしたい」というと、その場で四年分の給料の振り込み記録を印刷してくれた。その後、カウンターで持ってきた書類を提出し、聞かれたことに答えたり、記入するように言われたことを記入したり、待たされたりした。こうしてここで一時間以上かかった。最後にコピーを終えたパスポートと雇用契約書を返され、両替の伝票をもらってまた二階へ。どうやら「GOUHUI」というのは「购汇」のことらしい。
二階のカウンターで、用意してきた必要事項をスマホごと渡して見せ、それを行員がパソコンに打ち込んでいく。そこでまた数十分かかった。
結局、合計で二時間弱を要した。
翌日、日本側の銀行から着金の連絡メールが来た。そのメールの指示に従って、送金目的などを答える。送金目的は「自己資金の移動」にしておいた。
その翌日、さらに説明を求めるメールが来たので、「中国の大学で教師をして得た収入を貯金したものを将来の生活に備えて日本に送金したい」と記入し、銀行アプリで出入金記録を、税務局のアプリで納税記録をダウンロードして添付したメールを出した。
土日を挟んで月曜日に入金。
こうしてずっと気になっていた日本への送金が完了した。たいへんと言えばたいへんだが、用意するものを用意し、一つ一つこなしていけばそう難しくないことがわかった。これからも一度か二度は送金しなければならないと思うが、一度やってみれば何とかなると自信がついた。