2024/01/03

偽坊主

 一日が余計に休みになっただけで二日から通常の生活に戻った。

今日は、午前中は大学で午後は寺に行った。

今日はなぜか一時間も早くついてしまった。教室ではいつもお坊さんの一人が昼寝をしているので、早く行くと邪魔をしてしまう。そう思って、本殿の前に座って本を読んで時間をつぶすことにした。ちょうど天気も晴れてポカポカ暖かかった。

そうしていると、誰かが私に声をかけてきた。顔をあげてみると、尼姑が立っている。ここでわたしが教えている人ではないし、見たこともない顔だった。他の寺からここへ用事があってきた人だろうか。

「阿弥陀仏。わたしの身内が病気になって急に帰らなければならなくなったのですが、車代もありません。少しお金をいただけませんか」というようなことを言う。もっと仏教らしい言葉遣いだったので、よく聞き取れないところもあったが、そういう意味の内容だった。

「あなたはここの方ですか」と尋ねてみると、「通りがかりだ」と言う。

この人はわたしのことを観光客だと思っているのだろうが、出家者だったら、こんなことを見ず知らずの観光客に言うだろうか。もし本当に出家者で困っているのなら、観光客ではなくて、ここの寺の出家者に相談するのではないだろうか。

一応、剃髪しているし、僧衣も来ているから、もしかしたら?と思ったが、

「わたしはここで日本語を教えている日本人です。あなたの言っていることは聞き取れません。ごめんなさい」と言ってその人から教室のほうへ逃げた。

教室に着くと、もう二人のお坊さんが来ていたので、「外でこんな人がいたけど、本物のお坊さんはそんなことするはずがないよね」と聞くと、二人とも「ありえない。それは偽物だろう」とのこと。三人で元のところに戻って、その人を探してみたけれど、もういなかった。寺でお香を売っているおばさんにも聞いたが、知らないとのこと。

お坊さんによれば「うさぎ先生がここで教えていると言ったから、まずいと思って逃げたのだろう」と言っていた。その後、わたしが教えているもう一人のお坊さんも来たので、その話をすると、彼女はすました顔で「むかしから、そういうのはよくあること」だと言っていた。

しかし、仏の名をかたって人を騙す人がいることにも驚いたが、寺の人が行き来するような場所でそういう詐欺をしていることにも驚いた。たしかに他の寺のお坊さんがいろいろな用事で訪ねてくるし、わたしにも小さな声で話しかけてきたから、意外と誰にも不審に思われないのかもしれない。

お坊さんのいうことだと「そういう人は僧衣を着ていても、僧衣の下に着ているものまで気を使わないから、足元を見て僧が履いているような裾を絞ったズボンをはいているか確かめてみればいい」ということだった。

5 件のコメント:

  1. タイの坊さんのふりをしたそういう人が、日本の観光地によく現れるそうですよ。

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  2. 騙される人がいるのでしょうね。

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  3. 陰徳を積みたい人に会える場所を選ぶのかな?

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  4. 狸は化けますが騙しません。騙すどころか、阪神・淡路大震災のころには寸借詐欺に遭いました。

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  5. ネットで上野公園の偽物坊主の報道を見ました。
    日本人だったら、東照宮の修理費を坊さんが集めているのがおかしいと気付きますから、外国人を狙っているんですね。
    今回の偽坊主は、寺に来た人をねらえば、猫ネイサンのおっしゃる通り、善男善女として困っている人を無下にもできないだろうということなのだろうと思います。

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