この本は先日読み終わった。
王绮瑶という女性の青春期から死去までの物語。
少女王绮瑶は友人のコネで映画の撮影所に出入りしたり、日用品の宣伝ポスターに写真が使われたりするようになる。
そして、お金持ちの家庭出身の文学少女やカメラマン程先生の後押しで、ミス上海コンテストに出場して、三位の「三小姐」となる。
王绮瑶は美人だが、トップスターになるような際立った存在ではなく、日用品のポスターにちょうどよいくらいの美しさで、コンテストに三位になる程度の上海の典型的な女性なのである。
ミス上海三位となったことから、彼女は国民党の大物の李主任に見初められ、三番目の妾として囲われる。
その後、李主任は飛行機の墜落事故で死ぬ。
王绮瑶は内戦から逃れ、母方の祖母の家に疎開する。そこで、都会的な彼女にあこがれる阿二という少年に出会う。阿二は王绮瑶につりあう男性になるために上海へ向かう。
その後、王绮瑶は上海に戻り、注射をすることができる資格をとってアパートの一室で開業する(こんな仕事があったんですね)。こうして細々と生活をしていたが、裕福な厳夫人と付き合うようになる。
王绮瑶はこの厳夫人を通じてその甥の康明遜と密かに交際するようになるが、過去の素性を明かせない王绮瑶は良家の息子である康明遜と結婚することはできない。身ごもった子どもも康明遜の子どもであることを周囲に隠さなければいけないので、ハーフの青年を騙して関係を持ち、彼の子どもであることにする。
王绮瑶は出産し、一人で子どもを育てる生活をするが、若い頃に知り合ったカメラマン程先生が蔭に日向に彼女を助ける。しかし、この程先生は文革中に自殺に追い込まれる。
いつのまにか、娘は成長したが、この娘は王绮瑶のようにお洒落で美しい娘ではなかった。しかし、結婚が決まって夫とともに渡米する。
王绮瑶の家は若い友人たちが出入りするサロンのようになり、そのうちの若い青年老克拉と王绮瑶は恋をする。老克拉はオールド上海の雰囲気のある王绮瑶に魅力を感じたのである。
王绮瑶の家に出入りする若者の中に、大金持ちの御曹司だという触れ込みの青年がいたが、彼は実はあやしい為替取引などをしている貧乏人だった。彼は王绮瑶がかつてのミス上海であり、国民党の大物が残した財産を持っていることをかぎつける。彼によって王绮瑶は殺される。
簡単にいうとそういう話だ。
この小説を作者王安憶は「『長恨歌』は、とてもとても写実的な作品です。」と言っているとAmazonには書いてある。作品の中に、博物館のジオラマを詳細に説明していくように上海の街や人々の暮らしなどを描いていく表現が多いので、そういうことを言っているのかもしれない。しかし、なんとも現実味のない物語である。李主任や程先生のような身近な大切な男性がなくなっても、王绮瑶がそれをどのように受け止めたのかなどは描かれない。
母一人子一人の家庭で育てた娘も、その成長の過程にはあまり触れられず、いつのまにか思春期の頃になってしまう。
王绮瑶の生活も疎開先から上海に戻ったころは、患者に注射をする仕事をして質素に生活していたようだが、そのうち、あまり仕事のことは書かれなくなり、娘の友人とファッションに夢中になったり、サロンのように若い人を家に呼んだりしてすごすようになる。いったい何をして生活をたてているのだろうか。李主任が残してくれた金の延べ棒に頼って生活をしていたのだろうか。最後に彼女を殺した青年長脚が奪い取った箱を開けた時に失望したところから、そんなに李主任が残した金はなかったようにも思える。そういうところもよくわからない。それにいくら美貌で雰囲気があるからといって、最先端の娯楽がある上海で、そうしたところで遊ぶ若い子たちが母のような年齢の彼女のアパートの部屋に集まって過ごすようになるというのも、何だかありえないような気がした。
なんとなく王绮瑶という存在を通して、上海の街の時の流れを遠くから見下ろしているような感じの物語だった。
たしかに上海の街や人間模様の描写は、ある時は鋭く、ある時は繊細で、今私が住んでいる路地のような中国江南の都会のゴミゴミして湿度が高く人間臭くかび臭い場所がポエムのように描かれていて、そこに読書の楽しみはあったが、物語は現実離れしてつかみどころがないように思え、あまり私の好みではなかった。
〇しかし、第三部はよかった。ラストで王绮瑶の命を奪う長脚という青年の存在が、鮮やかに大都会の闇というものを表している。根っからの悪人ではないのに、都会の虚飾の中で出自をいつわり、インチキを行うようになる。こういう悲しい魑魅魍魎が生まれたり、潜んでいたりするところがいかにも都会の怖さだという気がした。そして、互いに後ろ暗い背景を持つ者同士が争い、長脚は王绮瑶に本当の姿を見破られ、王绮瑶も滑稽な本当の老いた姿を晒して死ぬ。オールド上海の匂いたつような雰囲気に酔わせておいて、こういうエッジが効いた残酷さで締めくくるところが怖い。長脚に「おばさん」と呼ばれて、王绮瑶が怒るところも、テネシーウィリアムズの『欲望という名の電車』のブランチみたいな気味悪さを彷彿とさせるものがあってよかった。
「家族ゲーム」を見ようとしたけど、冒頭数分で挫折しまちた。
返信削除最初の部分ってそんなにつまらなかったでしたっけ?
返信削除つまらないというより、気持ち悪かったです。
返信削除「蘭亭序」は行書なのでは?
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