家で使っているマウスの調子が悪くなってきたので、新しいものをタオバオで注文した。
それが来るまで少し不便だ。
『封鎖』。
登場人物は呂宗楨と呉翠遠。
舞台は日本占領時の上海。日本軍によって区画の封鎖が行われ、停止した路面電車内のわずかな間のできごと。
宗楨は銀行勤めの会計士、35歳。妻子があるが、この時代の小説によくあるように妻は親が決めた相手である。毎日の仕事にも妻にもうんざりしている。
翠遠は大学で英語を教える教員。25歳。優等生の彼女は親の言う通りに勉学に励み、当時の女性としては異例の職業についている。しかし、そうなってみると彼女の親は彼女がよい相手と結婚することにしか興味を持たなくなる。すべての人に自分は尊重されていないと思っている。
この現状に不満をもつ二人が閉鎖された電車の中で出会い、あれこれの話をしているうちに、お互いに惹かれあうようになり、結婚の話にまで発展する。とはいえ、宗楨は妻子がある身で経済的な余裕もないし、離婚することは考えていない。
翠遠は良家の娘であり、妾になることは親がとうてい許さないだろう。翠遠の心は揺れ、涙が目からあふれる。
別れ際に翠遠は電話番号を伝えるが、宗楨はペンを見つけることができない。翠遠は赤鉛筆を持っていたが、もし宗楨が電話番号を書き留められなかったことでそれを忘れてしまうなら、それまでの愛情なのだと考えて、鉛筆を貸さなかった。
電車が動き出し、宗楨は人ごみの中に去っていく。
しかし、翠遠は、電車をおりたと思っていた彼がもともと座っていた離れた席に座っているのを見つけ、彼にとってこの恋がゆきずりのものであったことに気づく。(こういう描写が切ない。)
車窓から見える次々と去って行く光景が、彼女にとって「死んだもの」となっていくのと同様に、この恋も終わったのだ。
…というような内容。
「封鎖」とは、電車の中の状態のことを指すのだろうが、同時に、彼と彼女が
抜け出せないでいる現実の生活のことも指しているのかもしれない。
わずか一時間にも満たないつかのまの恋は、彼らの真情のふれあいだったのか、それともお互いに幻想をなげかけたものだったのか。どちらなんだろう。
そんなことを考えさせるような余韻が、張愛玲の作品にはある。
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